飴色蝶 *Ⅱ*
庵は、時が止まったように
ずっと、何かを考えている。

しばらく沈黙が続いた後

庵の重い口が開いた。

「カナメ、どこでもいい
 泊まれる場所で
 彼女を降ろしてくれ」

「えっ」

巴と要は、庵の言葉に驚く。

「何時になるか分からないが
 用が済んだら俺もそこへ向う
 それまで
 一人で待っていられるか?」

「ええ」

要は、深刻な声で庵に
問いかけた。 

「親父・・・いいんですか?
 スミレさんが悲しみます」

「いいから
 言うとおりにしろ」

巴は、庵が心から愛している
彼女の名前を聞いて罪悪感に
苛まれたが

その想いを振り払い
庵の胸にしがみ付いた。
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