飴色蝶 *Ⅱ*
部屋のドアを開き、室内へ入る
庵に、巴は勢いよく抱きついた

「遅いから
 もう来てくれないと思った」

音を立てて閉まるドアは

二人の姿を隠した。

庵は、抱きつく巴の体に
触れようとはせず
  
腕を下ろしたまま
その場に立つ。
  
そんな庵に、口づけを交わそう
とした巴だったが

庵は顔を逸らす。

もう一度・・・もう一度

しかし、庵は、何度も顔を
逸らしては
  
口付けてはくれない。

「イオリ・・・?」

庵は何も言わずに、巴の手を
痛い程に、強く握り締めて
部屋の中へと連れて行く。
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