飴色蝶 *Ⅱ*
庵の手が、巴に触れようとした

その時、彼女は叫ぶ。

「やめて」

巴は、涙を浮かべて庵を
見つめる。
  
彼の手が、彼女へと伸びる。

そして、触れようとした。

「イオリ、お願いだからやめて
 こんなの、わたしが望んで
 いたものじゃない
 
 わたしはただ、あなたを近く
 に感じたかっただけなのに
 口付けてもくれない、優しく
 触れてもくれない
 
 あなたを、ずっとずっと
 遠くに感じる・・・
 もう、やめて」

庵は、床に落ちている巴の
シャツを手に取り、そっと
彼女の肩にかけてあげた。
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