飴色蝶 *Ⅱ*
「イオリ、そんなにも
 私の事が心配?」

「ああ、俺はもう俺に関わった
 人達の死を見たくない
 こんな世界にいて人の死を
 怖がるなんておかしいだろう
 笑ってもいいぜ」

巴は、庵に抱きついた。

「笑えないよ、おかしくなんか
 無い、わたしだってあなたが
 この世から消えてしまうかも
 しれない、それが、怖くて
 怖くてしかたがないもの
    
 イオリ、お願い、今日だけで
 いい、今日だけでいいの・・
 何もしなくていい、ただ
 わたしの傍に居て
 わたしの隣で眠って欲しい
 
 あなたを心配させるような事
 は、もうしないと誓うわ
 あなたを諦める事、努力する
 
 だから
 今夜だけ、わたしの傍に」

庵は頷いた。

夜は、静かに更けて行く・・・

これが裏切りの行為だと

菫、お前が言うのなら
  
裏切りなのかもしれない。 

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