飴色蝶 *Ⅱ*
赤信号で停車した幹生は、前方
道路脇に路上駐車している車の
運転席のドアを閉める
その男性に、見覚えがある。

「あれ、あの男、どこかで
 見た事がある、確か・・・」

幹生の運転する車は、青信号で
動き出し、その車の隣
擦れ擦れを走る。

菫は見つめる、車の傍に立つ男性
の後姿を、そして彼女は気づく
その男性が要であるという事を。

「カナメさん・・・」

「スミレ、知ってる人?」

幹生の運転する車は、どんどん
要から離れて行く。

「ミキオさん、お願い
 車を止めて
 カナメさんがいるなら
 きっと、イオリもいるはず」

幹生が、車を脇に寄せて停める
のと同時に、菫は後部座席の
ドアを開け、その場に降り立ち
 
ドアを勢いよく閉めて、庵の元
へと駈けて行く。

「スミレ、走っちゃ駄目・・」

雪乃の言葉は

今の菫には聞こえない。
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