飴色蝶 *Ⅱ*
車に乗り込んだ庵は
いつものように窓の外
流れる景色を見つめていた。

そして、ポケットの携帯に
手をとめて、ふと気がつく。

もう、電話をかける必要が
ない事を・・・
 
いつの間にか、菫に電話を
かけることが庵のクセとなり
楽しい時間でもあった。

彼女の声が聞けない事が
こんなにも寂しい。

もう、お前に逢えないのか・・

二人は片方の羽を捥ぎ取られた
蝶々のように痛さと苦しさに
耐えながら、その捥がれた
片方の羽を探し続ける。

ずっと・・・ずっと・・・探す

今の二人は

上手に空を飛ぶことも

水面を漂うこともできない。

あなた無しでは

あの空を飛べない・・・

あなたがいなければ

私はわたしでいられない。
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