飴色蝶 *Ⅱ*
「どうすればいいの、イオリ
 父の矛先は、彼女にまで
 向けられている」

要に抱きしめられた

庵の大切な人

菫の姿を、巴は思い出していた

その夜庵は、帰宅した姿のまま
で疲れた体を、ベッドに沈めた

上着のポケットに入ったままの
充電の切れた携帯電話・・・

雪乃からの知らせも、巴の想い
も庵には、届いていない。

『私は
 貴方の裏切りを許せない』

一日中、菫の言葉が、彼女が
肩を震わせて泣いている姿が
頭から離れない。

菫は今頃、どうしているだろう

泣いていないだろうか・・・

『あの話』

あの話とは、いったい何の話
なのだろう?

庵は、その後、入浴と着替えを
済ませ、強い酒をグラスに注い
では、飲み干すを一人繰り返す。

そして、酔った勢いで
このまま眠ろうとベッドで
目蓋を閉じた。
 
強く、強く、閉じた・・・

しかし、菫の事が気になって
眠れない。

庵は、深い息を吐く。
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