飴色蝶 *Ⅱ*
何度、そう

自分に言い聞かせても
 
不安な想いは募っていくばかり

繋がらない電話に、苛立ちさえ
感じる程。
 
履き替えようとした靴を
ロッカーに戻し

脱いで片付けたはずの上着を
ハンガーから外し袖に腕を通す

そして、荷物を手に持ち
ロッカーを勢いよく閉めた後
菫は、鍵をかけた。

そんな菫の行動に、同僚の一人
が声をかけた。

「スミレ、どうかした?」

「私、行かなくちゃ行けない
 ごめんなさい
 社長には、後で連絡します」

それだけ言い残して、菫は
従業員室を出て行った。 

イオリ・・・

どうか無事でいて。

「スミレ、ちょっと待って
 ・・・・・・」

心配する仲間の声も

今の彼女には、届かない。
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