飴色蝶 *Ⅱ*
「スミレ、本当にそれで
 よかったの?
 
 イオリ先輩がその女性と
 結婚してしまっても
 あなたは、本当に
 後悔しない?」

「うん、大丈夫」

言葉とは裏腹に、菫の頬を
涙が濡らす。

「スミレ?」

菫は両手で、左右の目頭を
押さえ涙を拭う。
 
「駄目だなぁ、わたし
 イオリを諦める事、ちゃんと
 頭と心で理解して受け入れた
 はずなのに、そうする事が
 彼にとって一番いい事だって
 ・・・なのに
 どうして、涙が出るの?」

雪乃は重い口を開き、あえて
菫が触れてほしくないだろう
言葉を言う。

「それはきっと、本当のスミレ
 は、イオリさんを諦める事を
 受け入れても理解しても
 いない、だからあなたの想い
 は涙となり溢れて、瞳から
 零れ落ちる
 今の、あなたは、ただ無理に
 理解したふりをしているだけ
 で、その涙が真実」
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