飴色蝶 *Ⅱ*
憎しみ

傷ついた羽

部屋から、一歩も外へ出る事の
できない巴。

庵の大切な人が危険だと
分かっているのに

何も行動できない・・・

自分の無力さに失望した巴
は、何もする気が起こらず
ただ、ベッドに横たわって
愛する人の役に立つ事が
できない自分を責めた。

巴の部屋、ドアをノックする音
が聞こえ、扉を見つめた彼女の
瞳に映る、一人の男性。

それは、遠い昔、兄だと知らず
に愛した人。

愛し合った

あの日の記憶が甦る。

まだ幼さの残る、初心で少女
だった巴が、初めて好きに
なった男性。
 
彼女は新を心から愛し

彼との未来を夢見ていた。
  
それなのに、巴が異母妹である
事を、会澤組長より知らされた
新は、泣いて縋る巴に一方的に
別れを告げ、彼女を捨てた。
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