飴色蝶 *Ⅱ*
「駄目だ、お前は、ここで待て
 何も、組長と若頭の二人が
 揃って、奴らに殺られてやる
 事は無い
 俺に何かあれば、組を立て
 直すのは、カナメ
 お前の役目だ」

「しかし、親父・・・
 一人でなんて無謀過ぎます」

「カナメ、よく聞け
 奴らは、そう容易く俺の命は
 とらないだろう
 
 堅気の女にまで、手を出す
 ような卑劣な奴が、俺を
 甚振れるこの機会を
 そう簡単に手放す訳が無い
 
 殺るなら、精々楽しんでから
 息の根を止めるはずだ
 
 事務所に踏み込むのは仲間が
 来てから、それからでいい
 十分だ

 絶対に、俺に何かあっても
 お前一人では乗り込んで
 来るな、分かったな」

「はい」
 
車を降りる為にドアにかけた手
を見つめながら、庵は言う。

「カナメ、俺に
 
 もしもの事があったら
 
 すみれを頼む」
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