飴色蝶 *Ⅱ*
「分かりました」

ドアが開き、車から降り立つ庵

ドアを閉める庵に、要は告げる

「親父、あなたと
 これからもずっと、こうして
 一緒に走って、生きたい
 どうか、ご無事で」

車内を覗き込み、右側の口角を
上げて、庵は微笑む。

「ありがとう」

菫が待つ場所へと、庵は

一歩ずつ近づいて行く。

すみれ、お前を傷つける

全てのものを、俺は許さない。
 
事務所の前で、立ち止まった
庵に、近づく男達を蹴散らし
庵は、前へ進む。

愛しい人の元へ。

しかし、多勢に無勢

庵の抵抗も虚しく、膝を付く
庵の両脇を抱え、男達が
事務所内へ連れて行く。

要は、その姿を遠くで見つめて
両手に握り拳を作る。

歯を食いしばり

仲間が来るのを待つ。
< 202 / 410 >

この作品をシェア

pagetop