飴色蝶 *Ⅱ*
「こんなに傷ついて・・・」

庵の顔は、ところどころ
殴られたせいで腫れ上がって
いた。
  
菫がそっと、その傷に触れる
と、彼は顔を顰めた。

「ごめんなさい
 私のせいでこんな目に」

「お前のせいじゃない
 遅かれ早かれこうなっていた
 
 すみれ、もっと顔を見せて
 殴られたのか、口の端が
 切れてる、痛いだろう?」

縛られた両手・・・

こんなに近くにいるのに

この手で
 
菫に、触れる事ができない。

菫を抱きしめて

守ってやれない

庵の歯痒く、情けない思いが
表情に表れ、目を伏せた。

そんな庵の頬に手を翳し
彼の瞳を見つめた菫は

精一杯に微笑んでみせた。  

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