飴色蝶 *Ⅱ*
車窓には、見慣れない風景
が広がる。

「シュリさん、ここは・・?」

駐車場に車を停めた朱莉は
後ろに置いていた上着を取り
菫に渡した。

「この近くに、昔住んでいた
 別宅があるの
 狭いところだけれど
 落ち着くまでは、そこで
 生活しましょう
 
 雨の中を、少し歩かなくちゃ
 いけないから、それを着て
 フードを、ちゃんと
 かぶってね」

「いえっ、それだと
 シュリさんが濡れてしまう 
 貴方が使ってください」

受け取った上着を朱莉に返そう
とした菫に彼女は言う。

「ほら、雨に濡れるといけない
 から私の言うとおりにして」

「ありがとう」
 
雨が降る中を

二人は足早に歩く。
< 233 / 410 >

この作品をシェア

pagetop