飴色蝶 *Ⅱ*
「やる」

新は、庵から煙草を受け取り
口に銜えて目を伏せ一服する。
   
そんな、新を見つめながら
庵は呟いた。

「親を亡くして
 お前まで失えば
 トモエはどうなる?
 
 あいつには、もう
 お前しかいない」

庵の言葉に、新は声が出ない。

「・・・・・・」

「俺も、お前も知っている
 家族が誰もいないという事が
 どんなに、寂しくて
 どんなに、遣る瀬ないかを
 ・・・・・・
 この広い世界に、たった一人
 誰からも頼られる事は無く
 必要ともされない
 その寂しさは時に、恐怖心に
 変わる
 恐怖に耐え切れず死を選び
 逃げ出したところで
 誰も、気づいてはくれない
 だろう
   
 自分の存在が、全く意味を
 持たない事に居た堪れない
 気持ちになる
   
 そんな思いをトモエにさせて
 はいけない
 
 トモエから父親を奪ったお前
 には、彼女を守る義務がある
 あいつを悲しませるな」

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