飴色蝶 *Ⅱ*

幻を抱く

透馬は、数人の組員達と
その場所で誰かを待っている
ようだった。

「最近、この辺りで貴方を
 よく見かけると子分が話して
 いましたので、一度、貴方と
 酒の席を交えたいと思い
 今夜は待っていました
 ご一緒しても?」

こんな人込みで、対立する
組の親どおしが顔を合わせ
このまま一緒に酒を酌み交わす
など、あってはならないこと。

他所の組の者が、どこかで
見ているとも限らない。
 
ここは、共に行動をする事は
控えた方がいいと判断した
要の言葉と、庵の言葉が
重なる。
  
「それは・・・」

「俺も一度
 アンタと話をしたかった」
 
透馬に誘われて入った
高級クラブで、彼の隣に
座る女性に、庵は見覚えがある
 
庵は彼女の事を、じっと
見詰めた。

ほろ酔い気味の、庵の甘い
目線に、彼女の頬が赤く染まる
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