飴色蝶 *Ⅱ*
「あの日、産婦人科へ向かう
 途中、偶然、カナメさんの姿
 を見かけたの
 彼がいるなら必ず貴方もいる
 私は、貴方に逢いたい気持ち
 を、どうしても押さえられ
 なくて、あの場所に駆けて
 行った、そこで私は・・・」

「俺と彼女がホテルから
 出てくるところを見た」

「そう・・・
 イオリ、正直に言うね
 あの光景を思い出すと
 こうして貴方と愛し合った後
 でも私の胸は痛くて堪らない
 全てを話さなくていい
 ただ、彼女は誰?」
 
庵はそっと、隣で横たわる菫
を抱きしめる。

「・・・彼女は
 会澤組長の娘だ」
 
「あの人が・・・
 アラタさんが以前
 話していた人」

「すみれ、お前に全てを話す
 だから、聞いてくれ」

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