飴色蝶 *Ⅱ*
菫は、抱きしめる庵の腕を
潜り抜けベッドから起き上がり
脱いだシャツを拾い身に纏った

「すみれ?」
 
「風邪引くといけないから
 上だけ着るね
 ・・・・・・
 彼女、とっても綺麗な人
 だった
 貴方が惹かれるのも分かる」

ベッドに腰をかけ、シャツの
ボタンを留める菫と、向き合う
ように座った庵は、真っ直ぐに
彼女を見つめ真実を語りだす。

「あの日、俺は
 彼女を抱く為に
 あの場所へ行った」

庵の言葉が

菫の心に突き刺さる。

『彼女を抱く為』 

私は、彼が話す言葉の中に答え
をみつけた。

・・・貴方の声を

聞いていたくない。
< 265 / 410 >

この作品をシェア

pagetop