飴色蝶 *Ⅱ*
彼女の前を歩き、振り向く
少年が一人。

その男性は、浬をじっと
見つめて声を出さずに
両手を出して唇を動かす。

その唇は、こう言う。
 
『おいで』

浬には彼が誰なのか
すぐに分かった。

菫が、大切に持っている
一枚の写真。

その写真で、学生服を着る
男の人

彼は、あなた・・・

「ママ
 
 後ろにパパがいるよ」

後方を見つめて指を差して
そう告げる、浬の指先を

見つめた菫は・・・驚く。

心が、ざわめき震える。

「・・・・・・嘘」

菫の瞳に映る、庵は

八年前と全く変わらない。

その姿は、紛れも無く

愛しい人の姿。

菫の瞳から溢れ出した涙は

止まる事を知らない。
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