飴色蝶 *Ⅱ*
庵は菫へと歩み寄り、そっと
彼女を、その腕に抱くと
耳元で名を呼んだ。

「すみれ」

ずっと

この声を聞きたかったの

ずっと

この腕に抱きしめてほしかった

「本当のイオリ

 ・・・どうして」

庵の腕の中で見上げた菫は
庵の瞳を見つめる。

本当の貴方が、ここにいる。

少し不安な表情で、庵は菫に
問いかけた。

「お前の傍に居てもいい?」

庵の頬に手を翳す、菫。

「いいよ」

庵は、菫の答えを聞いて
ほっとするのだった。

見つめあう二人・・・
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