飴色蝶 *Ⅱ*
貴方の足音が聞こえ

私の足音と重なり

素敵なリズムを刻む。

庵は、待たせてある車に近づき
窓を覗き込み、運転手に御礼の
言葉をかけた。

そして、二言、三言、何かを
話した後、車はクラクションを
鳴らし、走り去って行った。 

出かける事をやめた菫達は
来た道を戻る。

隣で歩く、貴方の横顔をそっと
見つめると無精髭が薄っすらと
生え、疲れているように思えた

八年という期間を、刑事施設
で過した貴方。

私には、絶対に分かる事の
できない程の、辛く、苦しい
思いを乗り越えてきたに
違いない。

犯した罪は、貴方の肩に
重く圧し掛かる。
 
庵の腕に、寄り添う菫。

「イオリ、疲れたでしょう?」

「いや」
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