飴色蝶 *Ⅱ*
「いえ、今日は休暇だったので
 ・・・・・・」

正二は塀の外に出た息子、庵の
元気な姿を見て、安堵の表情を
浮かべるのだった。

「イオリどうだ
 娑婆の暮らしは、家族三人
 仲良くやってるか?」

「はい、先代、俺が留守の間
 すみれと、かいりが
 大変、世話になったようで
 ありがとうございました」
 
深く頭を下げる庵の肩を、二度
ほど強く叩いた正二は言う。

「私は、何もしていない
 スミレは一人で立派にカイリ
 を産んで、ここまで育てた
 母親とは強いものだな
 なぁ、チナツ?」 

「ええ、本当にスミレちゃん
 一人でよく頑張ったわ」

「シュリ、すみれから聞いたよ
 お産に付き添ってくれた
 らしいな、ありがとう
 俺が留守の間、お前にも迷惑
 をかけたな・・・・・・
 それから、遅くなったけど
 先代との結婚、おめでとう
 
 親父の事
 今後とも、宜しく頼みます」

庵は、朱莉に頭を下げた。
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