飴色蝶 *Ⅱ*
「イオリ、やめてよ
 私に、頭なんて
 下げなくていいよ」

八年前と変わらない庵の姿を
見つめる

朱莉の胸はもう・・・

以前のように、彼を想って
痛む事は無かった。

八年・・・

それは、庵への独り善がりの
愛情を忘れるには、十分な歳月
だった。

充分過ぎる時間・・・

ただ一人、貴方の事を忘れる事
ができずに苦しむ女性がいる。

彼女の心は、今も

閉ざされたまま・・・

私達は、傍から見れば信じられ
ない関係なのかもしれない。

正二が、血の繋がった父親で
あるという事実を知らなかった
とはいえ、その当時
まだ、彼の愛人だった朱莉を
庵は、その胸に抱き愛した。
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