飴色蝶 *Ⅱ*
一度、目を逸らしてしまった
私は、貴方を見つめる事が
できない。

逸らした菫の顔を、覗き込む庵

その瞳に吸い込まれていく。
 
狂おしいまでに、男の色香が
漂う貴方。
 
貴方の声、聞こえた・・・

「お前の全てを

 俺にくれないか」

庵の頬に手を翳し、菫は告げる

「貴方にあげられるもの
 私は、何も持ってない
 だって・・・
 私の全ては、もうとっくに
 貴方のものだから」 

庵は、菫を抱き寄せ耳元で囁く

「ありがとう」

庵の背中に触れる菫の手

絡まる細い腕。

「お前だけを愛している」

その言葉に、私の体は痺れる。
< 331 / 410 >

この作品をシェア

pagetop