飴色蝶 *Ⅱ*
庵は壊さないように、ゆっくり
と、その手首に触れようとした
その時

巴は、その手を勢いよく自分の
方へと引き戻し袖の中に隠した

そして、もう一方の手も
彼女は隠す。

「手、見せて」

首を振る、巴。

強引に彼女の両手を取り、袖を
捲ると両手に、リストカットの
痕が・・・

庵は、ゆっくりと袖を下ろし
目を伏せた。

「イオリ、ごめんなさい
 あなたを困らせる為に
 こんな事をしたんじゃない
 死のうと思ったんじゃない
 ただ・・・苦しくて・・・
 
 大好きな父を殺したあなたを
 私は、好きでいることを
 止められない
 私は、あなただけを
 愛している
 そんな私は、何て親不孝なの
 この苦しみから
 早く解放されたい
 ・・・・・・
 気がつけば、私の手は
 血だらけ・・・」

死を望んでいないのに、彼女は
手首を切る。
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