飴色蝶 *Ⅱ*
携帯で話す、要の言葉を聞いた
庵の表情が見る見る
真剣な表情に変わって行く。

自分の焦る表情の変化を、庵に
感じ取られてはいけないと思っ
た要は、軽く会釈を済ませ
その場を離れようとした。

そんな彼の肩に、手を置く庵。

「アラタがどうした?」

電話から洩れる声は言う。

今すぐ、三代目である

高月 庵に会澤組まで

来るようにと・・・

ちょうどその頃、菫は、庵達の
昼食の事がどうしても
気になって浬を起きたばかりの
雪乃に預けて、作ったお弁当を
持って、庵の住むマンションの
近くまで来ていた。

お弁当を届けたら

すぐに帰ればいい。

連れ攫われて拘束されたあの日
の事を思い出すと、この場所へ
近づく事、本当は怖い。

だけど、この場所には

二人の思い出がある。
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