飴色蝶 *Ⅱ*
『親を亡くして、お前まで
 失えばトモエはどうなる?
 あいつには、もう
 お前しかいない・・・
 トモエから父親を奪った
 お前には、彼女を守る義務
 がある
 あいつを悲しませるな』

「イオリ、彼は、どれだけ
 御人好しなの
 
 私の事なんて
 どうでもいいのに」

「アイツは、そういう男だ
 実の父を殺した俺の罪は
 永遠に続く
 その罪を、俺一人にだけ
 背負せる事はできない
 
 そう言って奴は身重の恋人
 を残し、八年もの間一度も
 彼女に会う事は無く
 刑に服していた
 ・・・・・・
 トモエ、お前が自分を
 傷つけている間
 
 イオリの大切な人は
 彼の子供を一人で産んで
 泣き言一つ言わずに立派に
 育てて、幼子と二人必死に
 生きて来たんだ
 
 イオリに逢いたい気持ちを
 殺して・・・
 イオリも同じだ」

黙ったまま、涙を流す巴を

新は強く強く、抱きしめた。
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