飴色蝶 *Ⅱ*
そう言って、立ち止まった
庵の腕を彼女は、さっきよりも
強く両手で掴んだ。

「怒ってるじゃない
 キスしたから怒ってるの?
 それとも、私が貴方を
 好きだと言ったから」

「この手を放せよ、放せ」

「どうして
 
 私じゃ駄目なの?」

庵に向って、そう投げかけた
女性は、菫でも、朱莉でも無い
・・・巴だった。

真赤な瞳で、巴は庵を見つめた

「・・俺の気持ちは変わらない
 組長の娘だか何だか知らない
 が、これは女のお前が口出す
 問題じゃない
 帰れ、もう俺に付きまとうな
 分かったな」

そう言って、庵は巴の手を
振り払い、待たせてあった
要の運転する車に乗り込んだ。

音をたてて閉まるドアの横に
立ち、彼女は言う。

「イオリ、貴方、殺されるわよ
 私と結婚なんてしなくて
 いいの、もう一度
 考え直して、お願い」
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