飴色蝶 *Ⅱ*
彼女は見つめる、庵だけを。
  
「あなたが好きなの」 

「何、言ってる、お前
 愛なんかに興味無いくせに
 冗談は寄せよ」
 
「あなたのせいよ
 愛する人と話す時の貴方
 とても素敵だった
 私も、貴方に愛されたい」

「人のものだと分かったから
 欲しくなったって訳か」
  
巴の瞳から、涙が溢れる。

「違う、そうじゃない」

「前にも言ったろ
 嫌いなんだよ
 あんたみたいな女
 
 話は終わりだ」

涙を流す彼女を見ていられない
庵は、その場所から立ち去る。

そして、彼女の手を振り払い
 
置き去りにした。

「会澤組のお嬢さんは
 親父の事を・・・」

「敵の男なんかに
 惚れない方がいい」

俺は、もう、誰も愛さない

愛する人、あなた以外

誰も愛せない。

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