飴色蝶 *Ⅱ*
「カナメ、今日は、酔いたい
 気分だ、このまま
 シュリの店に行ってくれ」

「分かりました」
 
『あなたが好きなの』

『嫌いなんだよ
 
 あんたみたいな女』

こんな言葉

腐るほど吐き棄てて

俺は今まで生きて来た。

人を傷つけて、今の俺が在る。

それなのに何を今更

良心が痛むのか?

勝手な男だ。

朱莉の店の奥の席に、要と二人
何を話す訳でもなく、ただ
黙って、酒を飲み続ける庵。

見兼ねた朱莉が常連客の元を
離れて二人の席に着いた。
 
「カナメさんも大変ね
 お酒も飲まずに何も話さない
 男の相手は疲れるでしょう」
 
「いえ
 そんな事はありません」
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