飴色蝶 *Ⅱ*
涙を流しながら微笑む

綺麗な菫。

庵は、無我夢中で彼女を
抱きしめて、耳元で囁いた。

「俺を愛してくれてありがとう
 お前の愛だけでいい
 俺は、お前だけがほしい」
  
ありがとう・・・

こんな俺を、愛してくれて

ありがとう。

あの日、私は、眠る貴方に

何も告げずに

この部屋のドアを開け

出て行った。

あの時、貴方と初めて結ばれた
私は最高と最悪の気持ちを
一度に味わった。

二人の間に、愛が成立しない
事実は、私の胸を締め付け
苦しめた。

虚しさは、涙となり

頬を濡らす。

私は、貴方の傍に居る事が
辛くなり

あの場から逃げ出した。
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