飴色蝶 *Ⅱ*
「本当、あの子ったら、別れた
 はずのイオリ先輩と元の鞘に
 収まっただけで無く
『結婚する事にした』だなんて
 平然と言い出すんだもの・・
 
 ありがとう」
  
グラスを持ち、ビールを勢い
よく飲み、更紗は呟いた。
 
「ねえ、ユキノ・・・
 スミレの結婚の事、喜んで
 あげてもいいんだよね?」

雪乃は、深く頷いた。

「ええ、おめでたい話だもの
 いっぱい、喜んであげよう
 ・・・
 私達に言われなくても
 イオリさんの住む世界が
 過酷だという事を
 スミレは知っている
 それでも、彼と
 一緒になりたいと願う彼女
 を私たちは止められない」

菫の幸せを心から願う
更紗と雪乃だった。

急の残業で、待ち合わせの
時間に遅れてしまった菫は
更紗と雪乃に逢う為に駅へと
駆け足で向う。

そんな彼女を呼び止める声が
した。

その声は、あの人の声。

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