飴色蝶 *Ⅱ*
「スミレ」

声のした方を見つめると
そこには、思ったとおり
新の姿があった。

「アラタさん
 ここへは
 もう来ないでくださいと
 以前、お願いしたはずです」

「スミレ、聞いてくれ」 

菫は、首を左右に強く振った。

「ごめんなさい、私
 急いでいるの」

その場を離れようとした菫の手
を強く掴み、新は言う。

「俺は、もう
 二人の邪魔はしない
 確かに、君を愛している
 気持ちは今も変わらない・・
 いつか、あなたを忘れる日を
 待つしかない
 そんな俺の想いなど、今は
 もうどうでもいい
 
 ただ、君に知っていてほしい
 高月組の組長である彼は今
 会澤組の組員達に監視され
 危険な立場にある
 
 いつ抗争が勃発するとも
 限らない、抗争が落ち着く
 までの間は、彼と離れて
 逢わない方がいい
 君にまで危険が・・・」

< 78 / 410 >

この作品をシェア

pagetop