飴色蝶 *Ⅱ*
「嫌だよ・・・
 もう、一秒だってイオリと
 離れていたくない
 アラタさん、あなたが何を
 言おうと、私はもう二度と
 彼の傍を離れない
 そう決めたの
 
 私達、結婚するんです
 だから、お願い
 邪魔しないで」

真剣な瞳で、新を見つめる菫を
彼はただ黙って抱きしめた。

「ごめん、もう何も言わない
 だから、少しだけ
 このままでいさせて」

新は、きつく菫を抱きしめた。

「アラタさん、苦しいよ・・」

彼女を守りたい

・・・新は、強く強く菫を抱く
 
「・・・お願い、離して」

菫の言葉に、抱きしめる腕の力
を緩め、新は、彼女を遠ざけた
 
そして、黙ったまま
菫を見つめる。

その優しい瞳が、語る。

『何も心配しなくていい』

彼は、告げる。

「大丈夫だよ」

何が、大丈夫なの?
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