飴色蝶 *Ⅱ*
私に問いかける間も与えずに
彼は、この場所を立ち去った。

大丈夫だという

言葉だけを残して・・・ 
  
菫は、新の後姿を見つめながら
彼の瞳と最後の言葉が
気になって、気になって
しかたがない。

更紗と雪乃の待つ居酒屋の扉を
開けようとかけた手・・・

その手は、ついさっき
彼に掴まれた手。

彼は、いったい何を考えて
いるのだろう?

庵は、その頃、正二に
呼び出されて彼の家へと
出向いていた。

車を降りた庵は、運転席の
要に言う。

「じゃあ、すみれの事を頼む
 俺は先代と話した後
 トウマと会ってから
 すみれの家へ戻る」

「分かりました、お前ら
 親父の護衛は任せたぞ」

「はい」

要の運転する車は

見えなくなる。
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