飴色蝶 *Ⅱ*
正二の部屋に通された庵は
菫との結婚の事を、正二に
話して聞かせた。

「そうか、彼女と一緒に
 なるのか
 彼女の親は知っているのか
 お前が極道だという事を」
 
正二は、飾ってあるウィスキー
のボトルに手をかけた。

「まだ、会っていませんが
 正直に話すつもりです」

「きっと、反対されるだろうな
 極道なんぞに、大事な娘を
 嫁がす親はいない
 
 今の時代も、昔の時代も
 同じ事、俺のように、お前も
 罵声を浴びせられるだろうが
 耐える事だな」

「はい」

ボトルの栓を抜き

グラスに注ぐ。
  
「イオリ、飲むだろう?」

「じゃあ、一杯だけ頂きます」

「今日ここへお前を呼び出した
 のは、ある噂を聞いたからだ
 会澤のやつは相当、お前の事
 をご立腹らしい
 周りで、お前のことを
 嗅ぎまわってる奴がいるのは
 気づいているか?」

「はい、何人かは」
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