飴色蝶 *Ⅱ*
正二の家の前、一台の車が
停まっている。

車の傍に立つ、伊納 透馬。

「親父
 お迎えに上がりました」

「ああ、すまない」

車へ乗り込む庵は、思う。

すみれ・・・ごめんな

ずっと、お前の傍にいてやると
約束したばかりなのに・・・

お前の元へ、帰れそうにない。

こうなる事は、分かっていた。

それなのに、俺は・・・
  
お前の喜ぶ顔が見たかった
ばっかりに
 
すぐには、叶えてやれない事を
分かっていながら約束をして
しまった。

お前の元へ帰りたい。

だけど、帰れない。

菫の幸せは

庵と一緒になること。

庵の傍にいること。
 
俺が傍にいたら、お前を
危ない目に合わせてしまう。

だから、今は帰れない。

< 83 / 410 >

この作品をシェア

pagetop