飴色蝶 *Ⅱ*
彼の胸に頬を強く寄せながら
やるせない気持ちの菫は
ある言葉を告げてしまう。

「嘘つき・・・」

私は、また、貴方を傷つける

菫を抱く庵の手が彼女から
離れ、頼りなく落ちた。

私は、貴方に逢えなかった
あの苦しい日常に、また
戻らなくてはいけない

その辛さに耐え切れず余計な
事を言葉にしてしまった。

その言葉が、どんなに

鋭く刺を持ち

貴方に突き刺さるかを

知っていて

私は、口にする。

「イオリの嘘つき

『一人にしないさ
 ずっとずっと
 一緒にいよう』って
 言ってくれたくせに
 
 私の望み、何でも叶えて
 くれるんじゃなかったの?」

口にしてしまった私は
自分を嫌いになる。
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