~秘メゴト~
「え…ええっ!?」


 はじめはきょとんとしていた姫乃だったが、やがて言葉が脳にやっと伝達したのか、弾かれたように一歩後退る。


「うち、誰もいないから。あ、もしかして料理音痴?」


 実は、姫乃は幼い頃から母に鍛えられていているので、料理は得意である。


「あ…いえ」

「じゃあ、来て作ってよ。時間平気なら」

「それは大丈夫ですけど…でも…」


 私なんかが、先輩のお家に行っていいの?

 …こんなこと、松本さんに知れたら…。

 だって、先輩と松本さん。キス、してた。

 本当は未だ別れていないのかも知れないよね…?


「…じゃ、なに? …襲われそうで怖いとか?」

「ちっ違います!」

「ああ、もう襲われ済みだもんな?」


 …またニヤニヤして私を見る。先輩っては、意地悪なんだ。

 もうこれは、ただのS気質だと思う。私が困るのを見て愉しんでるんだ。

 先輩の、私をいたぶる眼が、獣のようでとっても艶めかしくて。

 私はもっと虐めて欲しくなったりなんかして。


 今、確信してしまった。


 やっぱり私って、Mだったんだ。




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