~秘メゴト~
「どうぞ。入って」
先輩が重厚な玄関扉を開き、私を中へと促す。
「…お、じゃまします」
恐る恐る足を踏み入れた玄関は、オフホワイトの磨かれた大理石の床に、同色の壁一面のシューズクローゼットと、金細工の大きな鏡とで作られた明るい空間だった。
「正面がリビングだから。適当に寛いでて」
そう行って先輩は、右手にも延びる廊下へと消えていき、残された私は戸惑いながらも仕方なくドアの開け放たれたリビングへと向かった。
オフホワイトの床が続いたリビングは、我が家のリビングの3倍はあるとてつもない広さで、天井は吹き抜けで大きな天窓があり、開放感のある空間だった。
弧を描くような壁にずらっと嵌め込まれた細長い窓ガラスからは、夕暮れの赤みを帯びた橙色の光が洪水のように溢れている。
それが生活感なく整頓されている冷たいリビングを、なんとか温かみのある空間に彩っていた。
私は買い物袋を下げたまま、その光景に吸い込まれるように見入ってしまっていた。
先輩はこういう部屋で暮らしているんだ…。
私から見れば他人の家なんだから当然なのかも知れないけれど、豪華で清潔で雑誌から抜け出たようにお洒落なここは、とてもよそよそしく和めそうにもない。
寛いでて、って言われても、なんか恐れ多くて座る気にもなれないよ…。
「悪い、先に着替えてきちゃった」
どうしたもんかと悩んでいるうちに、私服に着替えた先輩がやってきた。
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先輩が重厚な玄関扉を開き、私を中へと促す。
「…お、じゃまします」
恐る恐る足を踏み入れた玄関は、オフホワイトの磨かれた大理石の床に、同色の壁一面のシューズクローゼットと、金細工の大きな鏡とで作られた明るい空間だった。
「正面がリビングだから。適当に寛いでて」
そう行って先輩は、右手にも延びる廊下へと消えていき、残された私は戸惑いながらも仕方なくドアの開け放たれたリビングへと向かった。
オフホワイトの床が続いたリビングは、我が家のリビングの3倍はあるとてつもない広さで、天井は吹き抜けで大きな天窓があり、開放感のある空間だった。
弧を描くような壁にずらっと嵌め込まれた細長い窓ガラスからは、夕暮れの赤みを帯びた橙色の光が洪水のように溢れている。
それが生活感なく整頓されている冷たいリビングを、なんとか温かみのある空間に彩っていた。
私は買い物袋を下げたまま、その光景に吸い込まれるように見入ってしまっていた。
先輩はこういう部屋で暮らしているんだ…。
私から見れば他人の家なんだから当然なのかも知れないけれど、豪華で清潔で雑誌から抜け出たようにお洒落なここは、とてもよそよそしく和めそうにもない。
寛いでて、って言われても、なんか恐れ多くて座る気にもなれないよ…。
「悪い、先に着替えてきちゃった」
どうしたもんかと悩んでいるうちに、私服に着替えた先輩がやってきた。
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