~秘メゴト~
 暗くなりかけた頃、先輩は家まで送ってくれた。


 道すがら、なんとはなしにお互いの話を尋ねては答えてを繰り返す。

 今まで聞きたくても、憚られて訊けなかったことも何故だかするっと言葉に出せる自分に驚く。


 どうしてかしら?


 …先輩は、なんとなく雰囲気が柔らかくなったような気がする。

 今までは先輩の周りだけ空気がぴんっと張り詰めていて、それが近寄り難く、冷たい印象をも他に与えていた。

 話すときも、何処か遠くを見据えているように感じた。

 それが今では、先輩は真っ直ぐに私の目を見て話してくれる。

 こちらが思わず恥ずかしくなってしまう程に。

 彼の恐ろしく整った顔に見詰められて、照れない女の子はいないんじゃないかと思う。


 笑顔を覗かせることも、珍しくはなくなった。


 何よりも、先輩が私のことを訊いてくれる。

 それが、凄い進歩。

 それって、少しは私に興味を持ってくれているから?なんて思ったりもして。

 自惚れかな?

 でも、とっても嬉しい。


 彼が訊ねてくれるから、私もずっと訊きたかったことを口に出せるようになったし。


 先輩との距離が、本当の意味で少し近付けた…気がする。





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