～秘メゴト～
『ずっと訊きたくても言葉に出せなかったこと』

　それは、ご家族のこと。

　先輩のご両親は離婚されていることは噂で知っている。

　妹さんがいることも。


　それを今日、思い切って尋ねてみた。


　「先輩はあのマンションで一人暮らしなんですか？」なんて遠回しな訊き方で。



　先輩は簡潔に、何の感情も交えずに答えた。


　先輩が小学生のときに離婚が離婚し、喘息持ちで身体の弱かった妹さんはお母さんの実家で暮らすことになったこと。

　妹さんとは仲良の良い兄妹だったこと。

　お母さんの実家は、この街から北へ列車で２時間程のところにあること。

　先輩はお父さんに引き取られたけれど、会社を経営するお父さんは殆ど海外で暮らしていること。

　結果、彼はあの広いマンションでほぼ独り暮らし状態で、最低限の身の回りのお世話だけ、通いの家政婦さんにやって貰っていることなど。


　これを、先輩は淡々と語ってくれた。

　その横顔は、家族と離れ離れで暮らす寂しさも、離婚に対する悲しさも、他のどんな感情も見ては取れなかった。





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