~秘メゴト~

さかさまの世界

 どのくらいそうしていたんだろう。

 気付けば、私は美術室の床にぺたんと座ったまま。

 顔を上げると、携帯を片手にした瑠璃が、心配そうな表情で私を覗き込んでいた。


「ひめの…? 大丈夫?」

「あ…うん。大丈夫、だよ」


 あれ 松本さんは?

 辺りを見回す私の行動で察してか、瑠璃が云う。


「松本さんなら暫く前に出ていったよ。…私、実は二人の後をつけてきて、美術室の外で待っていたんだけど…松本さんが帰っても、姫乃は一向に出てこないから」


 瑠璃は心配して付いてきてくれていたんだ。


「心配かけてごめん。…ありがと」


 自分でもびっくりするような、力無い頼りない声だった。


「姫乃、一体何があったの? 何を云われたの?」

「え…なにも…」

「ちゃんと話して!」


 瑠璃の必死な声色に、私はびくっとして彼女を見やる。


「ちゃんと話してよ…前みたいに、ひとりで抱え込んで悩んじゃ駄目だよぉ」


 今にも泣きそうな瑠璃の、その気持ちが痛かった。






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