~秘メゴト~
 先輩は黙ったまま、白くなるほどに強く拳をつくっている。


 その沈黙が、答えのような気がした。


「やっぱり、そうなの...?」


 途端に、世界がすうっと冷たくなり、自分はこの世でひとりぼっちのような感覚に襲われた。


 味方もなく、私を愛してくれるひともない、誰も愛すことのできない世界にひとり堕ちていくような。


 信じていた世界が崩れていく。


 大切だった想いが、儚く散っていく。




 『信じていたのに』


 『...信じたいのに』



 『愛していたのに』


 『...愛したいのに』








 深い奈落の底へ、まっさかさまに堕ちていく。







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