~秘メゴト~

おしゃべりな風

 聖桜学園には中等部・高等部・大学部・大学院がある。

 それらがこの広大な敷地に拡がる。

 高等部は、中等部から大学・大学院棟を挟んで、正反対の西側に位置していた。

 同じ学園なのに、その距離はとてつもなく、遠い。

 人ひとりを捜すのは、不可能な程に。


 先輩が卒業してから2年の間、彼を見掛けたことは一度もなかった。


 のらりくらりと月日が過ぎていた。

 

 たまに流れてくる風の噂。


 ――『上領先輩がサッカー部を辞めたらしい』



 そして、もうひとつ




 ――『上領先輩に、彼女が出来たらしい』



 風のおしゃべりは、ときどき聞こえてきては、私の胸をざわめかせ、そしてしゃぼん玉のようにヒトの記憶からは弾けて消えてゆく。



 …私の胸に抜けない刺を突き刺したまま。




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