~秘メゴト~
姫乃たちが入学したこの聖桜学園は、その名に因んで正門から校舎までに桜の樹が植えられている。
正確には、学園が建つ遥か昔の室町時代からここは桜の森だったという。
なので、学園の桜はかなりの本数が犇めき合い、近辺では有名な桜の名所であった。
正門から校舎までの道程は、桜の樹々のアーチを申し訳なさそうにぐぐり抜け、細く長く舗装され延びている。
春の心地良いそよ風に、桜の花弁がはらりはらりと舞い躍る。
「桜、綺麗だね…」
うっとりと、姫乃が呟く。
「ねえ。…けど、入学式の前にこんなに和んじゃってていいのかな」
「私達ってば、緊張感ないね」
「隣に居るのが姫乃だからだよ」
ふたりは肘でお互いを突き合い、顔を見合わせて笑った。
ふと。
姫乃は誰かに呼ばれたような気がして、ふいっと振り返り外を見遣った。
風が流れた。
淡いピンク色のけぶるような帳の向こうに、そこだけが…その人だけに、陽光が差し込んでいる。
眩しさと、よく姿が捉えられないもどかしさで、姫乃は眼を細めて窓から身を乗り出す。
凛とした綺麗な眼差しの、妖精のような男の子だった。
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正確には、学園が建つ遥か昔の室町時代からここは桜の森だったという。
なので、学園の桜はかなりの本数が犇めき合い、近辺では有名な桜の名所であった。
正門から校舎までの道程は、桜の樹々のアーチを申し訳なさそうにぐぐり抜け、細く長く舗装され延びている。
春の心地良いそよ風に、桜の花弁がはらりはらりと舞い躍る。
「桜、綺麗だね…」
うっとりと、姫乃が呟く。
「ねえ。…けど、入学式の前にこんなに和んじゃってていいのかな」
「私達ってば、緊張感ないね」
「隣に居るのが姫乃だからだよ」
ふたりは肘でお互いを突き合い、顔を見合わせて笑った。
ふと。
姫乃は誰かに呼ばれたような気がして、ふいっと振り返り外を見遣った。
風が流れた。
淡いピンク色のけぶるような帳の向こうに、そこだけが…その人だけに、陽光が差し込んでいる。
眩しさと、よく姿が捉えられないもどかしさで、姫乃は眼を細めて窓から身を乗り出す。
凛とした綺麗な眼差しの、妖精のような男の子だった。
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