~秘メゴト~
 有は、憐れな姿の姫乃を背にして、格技場の扉に手を掛けた。


 その横顔には、先程までの残酷なまでに美しい悪魔の影は、破片も残っていなかった。


 眉根を寄せ、蒼ざめた顔色で何かを思い詰めている。


 そうして、自らの拳を思い切り扉に叩きつけると。

 踵を返し、姫乃の元へと歩んでいった。





.
< 72 / 169 >

この作品をシェア

pagetop