~秘メゴト~
 ――― ハ゛ン ッ


 出口からもの凄い音が聞こえ、思わず身を竦めた。

 音がした方を見遣ると、俯いていた先輩がゆっくりと顔を上げ、こちらに歩いてくる―…。


 ―…今度は、なに…?

 無意識に身構えてしまう。

 どうしよう、私、先輩が怖い…!





 有は姫乃に近付くと、膝を折って屈み、姫乃の柔らかな頬を両手で包んだ。

 その表情は、暗く、切なく、苦悩に満ちた苦しげなものだった。



「…ごめん」


 有が視線を落として、力無く云った。


「身体…痛いか?」


 姫乃が おずおずと答える。


「…す 少しだけ」


 ほんとうは、下半身が悲鳴をあげていた。

 が、有の苦しい表情を目の当たりにして、何故かそるは言えなかった。


「シャワー…使う?」


 格技場の奥のシャワールームを顎で促す。

 姫乃の身体はどろどろだった。

 このまま帰宅しようものなら、家族に間違いなく心配を掛けてしまう…。


 姫乃は黙って頷くと、ゆらっとようやく立ち上がり、シャワールームへ向かった。




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