~秘メゴト~
 あの夜の前の数日間、俺は学校を無断欠席をして、最悪な日々を送っていた。

 無菌の嫌になるほど白い空間に、繋がれたか細い手首を力無く投げ出して眠り続ける妹。


 愛しいその蒼白い顔の前に、俺は己の無力さを痛いほどに感じて、何も出来ない自分を心の底から嫌悪し、苛立ち、呪っていた。



 その人生最悪な数日間の全ての負の感情を、たまたま会ってしまった姫乃にぶつけてしまったんだ。



 その結果、俺は罪悪感をも背負い込む羽目になった。

 だがその後、姫乃と同じ時間を過ごすことで、罪悪感は消えないものの、俺のなかの最深部にあるどす黒い塊が少しずつ溶けていくように感じることもある。


 ――あの夜、たまたま出会ったのが姫乃でなかったら、俺はどうしただろう?

 彼女だったから、抱いてしまったのではないだろうか?



 心の底まで冷え切っていた俺は、あの儚く輝く温もりに触れたかったのかも知れない―――?





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