~秘メゴト~
 いつもぴったりと閉じている筈の、格技場の扉は少し開いていた。


 ―…誰かいるの?


 そう思って耳を澄ますと、何となく人の話し声がする。

 気にせずに歩を進めるが、柔道部の部室のドアが半開きになっていた。

 姫乃がそのドアを閉めようと歩み寄ると、部室なかで折り重なる人影が見えた。


 あっ、やばっ。私 お邪魔じゃない!


 焦って顔を反らそうとしたが、逆に、見覚えのあるシルエットに視線は釘付けになってしまった。


 ――― 上領先輩 …



 松本らしき女子生徒に首に手を絡められ、くちづけを交わしているのは、紛れも無く、有だった。



 ――― っ…


 脚ががくがくと震える。


 これ以上の正視に耐えられず、姫乃は校舎へと覚束ない足取りで逃げ出した―――。





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